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概要:知人から「自分の働いている会社に来ないか」と誘われた人のうち、2人に1人が実際に採用選考に進んでいるという。これは驚くべき数値。そのワケは。
社員の知人紹介を活用した、リファラル採用が注目だ。2人に1人は、選考に進んでいるという。
Shutterstock
知人から「自分の働いている会社に来ないか」と誘われた人のうち、2人に1人が実際に採用選考に進んでいることが、リクルートキャリアの調査で明らかになった。さらにそのうち7割が「その会社や事業に興味があったわけではなかった」と回答。「想定外」の転職に踏み切っている様子が浮き彫りになった。
リクルートキャリアはこうした結果を受け、社員の知人紹介による採用である「リファラル採用」が「他の採用手法では採用できなかった人材へのアプローチに効果的」と、分析している。サービスへの問い合わせも倍増しており、採用難の時代、社員の人脈に頼るリファラル採用への注目が、これまでになく高まっているようだ。
※調査は正社員、契約社員として働く人650人を対象にしたWEBアンケート。2018年3月にリクルートキャリアが実施。
空前の採用難に頼みの綱?
2019年現在は、高度成長期の最高レベルに匹敵する、高い求人倍率。転職は完全な売り手市場だ。
撮影:今村拓馬
「2018年度は前年度と比べて、リファラル採用支援への問い合わせが倍増しています」
調査を実施したのは、リクルートキャリアのリファラルリクルーティング支援サービスの「グラバーリファー」。リファラル採用を進めたい企業に対して、どういう社員が実際にリファラル採用に関わればいいのかなどをアドバイスする事業を行なっている。
担当の松本知里さんは、この1年での注目度の高まりが、実施の背景にあったと明かす。
リクルートキャリアが2018年11月に実施した調査によると、4割以上の企業が過去3年間より中途採用人数を増やしていると回答。2019年1月の有効求人倍率は1.63倍と、高度経済成長期並みの高さで推移するなど、空前の人手不足による採用難が深刻化している。
求人広告やヘッドハンティングなど「あらゆる採用媒体を試してもなお、採用が充足できていないので、第3のチャネル(集客経路)としてリファラルに来ているという企業が多いです」と、松本さんは話す。
リファラル採用は、社員の知人紹介による採用手法。社員の個人的なつながりを活かすことで、質の高い人材に接触できる手段として近年、注目を浴びている。広告やエージェントに頼むよりも、社員の人脈をたどることで、採用コスト削減につながる面もある。
求職者にしても、実際にそこで働いている友人知人の「おススメ」であるということから、初めての企業でも信用度が高まる傾向があるとされている。
では実際、どの程度リファラル採用は効果的なのか。
選考へ進む割合は異例の高さ
出典:リクルートキャリア「リファラルで声をかけられた人実態調査」
リクルートキャリアのリファラル採用に関する調査によると、知人から「一緒に働かないか」と誘われた人のうち、半数以上が選考に進み、4割超が内定を得ている。「話だけ聞いた」という人は3割超で「話も聞かなかった」人はわずか5%程度。知人からの声がけであるリファラル採用には、高い確率で何らかのアクションをとっている実態が伺われる。
「誘われた人のうち半数以上が選考に進んでいる」という数字は、採用市場においてはかなりのインパクトといえそうだ。一般的なダイレクトリクルーティングサービスからのスカウトに対し、スカウトを受けた人の返信率は5%程度とされているという。
知人による転職の誘いから、選考プロセスに進む率が50%というのは、異例の高さともいえる。
ポジティブな選考がもたらす効果も
さらに、リファラル採用による転職者は「入社後になじむのが早い」「定着率がいい」という評価も多いという。その背景として、採用プロセスそのものの好感度が高いことも影響していそうだ。
リクルートキャリアの調査によると、誘われた際にどう感じたか?という設問に対しては、
「信頼できる友人からの誘いだったので、本当に自分のためを思ってくれているのだと思った」
「自分の状況・環境を変えるために、具体的な、アクションを起こすきっかけがつかめなかったため、救いの手が差し伸べられているような気持ちになった」
という、ポジティブな意見が多くみられる。
とはいえ一方で、リファラル採用特有の、ネガティブ面を指摘する声も。
「紹介だとプレッシャーを感じる」
「友人との関係が崩れないか心配になった」
注目が高まるリファラル採用だが、直近の3年で(調査当時は2018年)、知人に「うちの会社に来ない?」といった誘いを受けたことのある人は全体の2割にとどまっているのも事実。
アメリカの採用手段でもっとも多いのがリファラル採用といい、今後日本でも拡大の余地はありそうだ。
縁故採用との違いとは
世界最高レベルの人気企業グーグルの採用も、リファラルの活用が知られている。
GettyImages/Justin Sulliva
社員による知人紹介を活用するリファラル採用は、知名度やブランド力があまり高くない新興のベンチャー企業や、外資系企業では浸透している採用手法だ。Googleやメルカリなどが、積極的に活用していることでも知られている。
近年の特徴は、大手小売店や飲食、教育など「日系大手企業からもリファラル採用支援の相談が来ている」(リクルートキャリア)という点だ。
ところで、社員の知人紹介による採用といえば、旧来は日本社会の「縁故採用」が連想されるが、違いはなにか。
リクルートキャリアの松本さんは縁故採用との明確な違いとして次の3つを示した。
即採用の縁故採用とは違ってリファラル採用は、通常通り選考が行われる。
入社前提ではなく、選考ルートに対して質の高い母集団形成が目的
縁故採用は幹部クラスが実施するのに対し、リファラル採用は一般社員も関わるケースが多く裾野が広い。
リファラル採用が広がる本当の理由
さらにもっと大きな違いは、「どんな人が採用されるか」にあるかもしれない。冒頭の調査でも選考に進んだ人の7割が「その会社や事業に興味があったわけではなかった」と回答。これまでにないタイプの人材の採用にも有効といえる。
リクルートキャリアの広報担当者は、経済の低成長とデジタル化を背景に「今の日本企業は、新たな分野への進出や開発を模索しています。例えばITエンジニアなど、社内にいなかったタイプの人材を採用し、その人のリファラル採用によりIT人材をさらに引き込むことが可能になる。新たな層にアプローチする手段としても期待されています」と説明する。
血縁や地縁など、同じコミュニティーの人材を引き入れてきた縁故採用とは、ある意味、真逆の手段ともいえる。裾野を広げて一般社員の紹介も活用するリファラル採用が広がるのは、変化の激しい時代の人材戦略の、象徴なのかもしれない。
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