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概要:OECDがアジア太平洋諸国の社会保障政策やジェンダー、出生率、雇用などを分析した最新調査を発表した。浮き彫りになったのは、子育てをする女性たちの苦しい現状だ。
OECDが発表した最新調査から、日本の母親たちの孤立が見えてくる(写真はイメージです)。
shutterstock/MAHATHIR MOHD YASIN
2019年3月19日、経済協力開発機構(OECD)がアジア太平洋諸国の社会保障政策やジェンダー、出生率、雇用の現状などを分析した「図表で見る社会:アジア太平洋版」を発表した。2014年以来、5年ぶりだ。
出生率の高い国は女性の○○率も高い? 福利厚生はサービスと金銭的補助どちらがいい?
社会保障支出が多いワケ
日本の公的社会保障支出が国内総生産(GDP)に占める割合はアジア太平洋諸国より大幅に高く、OECDの平均も超えている。
GDPに占める公的社会保障支出(%)、2015/2017以降最新
OECD「図表で見る社会:アジア太平洋版」などをもとにウィレム・アデマ氏が作成
OECDのシニアエコノミストでジェンダー・家族政策の専門家のウィレム・アデマ氏によると、「高齢化で年金と医療費が増えているから 」だそうだ。
それもそのはず、日本の老年人口指数(生産年齢人口 (15~64歳) に対する65歳以上の人口の比率)はOECD加盟国の中で最も高い。
老年人口指数 (2015年時点と2075年予想)
OECD「図表で見る社会:アジア太平洋版」などをもとにウィレム・アデマ氏が作成
出生率と女性の就業率に相関?
少子高齢化問題は深刻だが今回の分析で、出生率が高い国は、女性の就業率も高いことが分かった。
アデマ氏は、日本の「女性が出産する年齢になると雇用率が下がる」と指摘。
「女性が子どもを産むと仕事を辞めなければならない、辞めることが期待されている現状は、労働人口の減少につながる上に、女性がのちのガラスの天井をやぶるのを困難にしてしまう。非常に残念です」(アデマ氏)
上記の分析で、出生率と男性の就業率や年収などの相関はないのかアデマ氏にたずねたところ、「男性の場合は女性と違って妊娠や出産による違いがないので、変化が計測できない」とのことだった。
裏をかえせば、いかに子育てのしわ寄せが女性だけにきているのかということだ。
女性の就業割合(15~64歳)と合計特殊出生率、2015年以降最新データによる
OECD「図表で見る社会:アジア太平洋版」などをもとにウィレム・アデマ氏が作成
「子育て支援=親の支援」であるべき
また、福利厚生における支出が、保育などの公的サービスより金銭的補助を重視しているのも日本の特徴の一つだという。
GDPに占めるタイプ別の福利厚生支出割合、2015年以降最新データによる
OECD「図表で見る社会:アジア太平洋版」などをもとにウィレム・アデマ氏が作成
生後11カ月の三つ子の次男を床にたたきつけて死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた母親が、一審で懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡されたことは記憶に新しい。母親は実家の両親にも夫にも頼ることができず“ワンオペ”の三つ子育児を続けており、犯行時はうつ病の状態だったという。
出産前に子育ての不安を行政に相談したが、双子の育児ガイドブックと多胎育児経験者の会のチラシを渡されただけで、出産後に保健師に相談すると子どもを一時的に預けられる「ファミリーサポートセンター」の利用を勧められたが、事前面談に3人の乳児を連れて行くことが難しく、利用することはなかったそうだ(朝日新聞3月16日)。
保育園の待機児童問題を含め、日本の子育て政策には課題が多い(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
家族政策の専門家として幅広く政策提言を行なってきたアデマ氏は、「北欧などでは聞いたことがない、ショッキングなケースだ」と話す。
日本と比べて北欧諸国は金銭補助よりも公的保育が占める割合が多いが、それは「子育て政策は子どもはもちろん、両親をサポートすることを重視しなければならないという考え方が根底にあるから」(アデマ氏)だという。
妊娠出産から6歳まで切れ目ない支援が受けられる、フィンランドの「ネウボラ」が顕著な例だろう。
母親の孤立防ぐには
今回の調査によると、日本の労働参加率における男女格差はヨーロッパより大きい(写真はイメージです)。
shutterstock/yurakrasil
また先のグラフからも分かるように、金銭補助よりも公的サービスの充実に注力しているのがデンマークとスウェーデンだ。
アデマ氏によると、産休育休後も労働人口が減少しないよう両親ともにフルタイムで働ける環境を整え、昔は女性にはパートタイムの仕事の方が人気があったので、フルタイムでも働いてもらえるよう子育て制度を充実させたのだという。
前出の三つ子の母親の裁判では、弁護側が「行政などの適切な支援がなされずに追い込まれた」と理解を求めたのに対し、一審の判決は「行政などの対応が(被告への)非難の程度を軽減できる事情があったと認められない」と指摘している。
金銭的な支援や育休復帰後も仕事ができる環境はもちろん必要だが、母親が孤立しない仕組みをもっと整えられないか。早急に検討する必要がある。
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